白内障手術

白内障手術

手術の知識

眼球の中にはピントを合わせるためのレンズ(水晶体)があります。このレンズが白く濁るとものが見えにくくなります(白内障)。

また、レンズの容積が増すと緑内障の原因になります。水晶体は薄い袋に包まれています。
手術ではこの袋をそのままにして、中身だけを取り除きます。最初に小さな傷口(2.4mm)を作成し、そこから細い器具を入れ超音波で細かく砕きます(下図左)。
水晶体はもともと光を曲げるレンズですから、取り除いたままではピントが合わなくなります。そのため、代わりとなる人工のレンズを袋の中に留置します(下図右)。

手術は局所麻酔で行い、痛みはありません(押される感じがすることはあります)。
手術時間は通常十分前後ですが、追加の処置が必要であったり、組織が弱っていたりすると二十分〜三十分かかることもあります。
白内障の進行度や眼の組織の健常性は人それぞれです。
例えば六十歳の方と九十歳の方では、後者の方が難易度は高くなり、合併症のリスクも高くなります。一方、若い方でも組織が病的に弱っていると手術が難しくなることがあります。
熟練した術者が施行する限り非常に成功率の高い手術で(成功率は99%以上です)、ほとんどの方はよく見えるようになったと喜びます。
霧がかった見え方が改善するばかりでなく、近視や遠視の改善、緑内障発作の予防効果もあります。
全ての手術に共通することですが、合併症のリスクは決してゼロにできません。ゼロに近いとはいえ、どなたにも合併症が起きる可能性はあります。しかし、万が一の合併症が起きても、硝子体手術と呼ばれる別の術式を追加で施行すれば、ほとんどの場合良好な結果が得られますので、過度な心配には及びません(硝子体手術が追加となる場合、手術時間が一時間ほど余計にかかります)。
後述する眼内炎を予防するため、術後一週間は洗顔・洗髪禁止とさせて頂いています。
シャワーを浴びたり、湯船に浸かったりするのは、胸より下であれば可能です。

次に、手術の合併症についてお話をします。手術は今より良くなるために受けるものですし、私も良くする確信があるからこそ手術を勧めるのですが、患者様がご自身の意思で治療を選択する上でも、合併症についてお話をすることは術者の義務でもあります。
以下、本手術において報告されている合併症について箇条書き致しますが、それぞれの頻度は稀なので過度な不安には及びません。
たとえるなら登山のさいの注意事項のようなものです。どうか軽いお気持ちでご一読ください。

手術の問題点、合併症

  1. 破嚢、核落下(千例に一例)
    水晶体の袋はもともと非常に薄いのですが、病気や加齢によってさらに脆くなることがあり、この場合、手術の途中で破れてしまいます。これによって水晶体が目の奥まで落下してしまうと、通常の方法では続行が不可能となります。この場合、前述の硝子体手術が必要となり、手術時間が長くなります。長時間の手術に耐えられない方の場合、宮古病院と連携した上で、全身麻酔下の再手術も検討します。硝子体手術は沖縄県全体でみても施行可能な施設の数は限られています。施行不可能な場合は他院へ紹介となり、特に離島の場合、患者様の負担も大きくなります。当院ではこの硝子体手術の施行が可能であり、その点においては万が一の合併症のさいも安心であるといえます。
  2. チン小帯脆弱(数百例に一例)
    水晶体が目の中の同じ場所に留まっているのは、それを支えている無数の細いヒモ(チン小帯)があるためです。ごくまれに、このヒモが非常に脆くなっていて、そのままでは手術を続けることが困難となることがあります。この場合、ワイヤーのようなもので水晶体を支えることで、ほとんどの場合問題は起きないのですが、それが不可能な場合は、傷口を広げて水晶体を取り出すことがあります。また、ぐらぐらになった袋には人工レンズを置いてくることができません。この場合、後日、レンズを縫い付ける手術が必要となりますが、この手術は一時間半程度かかります。
  3. 術後眼内炎(二千例に一例)
    頻度は稀ですが、目の中で雑菌が繁殖してしまう非常に重い合併症です。最悪の場合、失明に至る可能性があります。ほとんどの場合、術後に目をいじったり、不潔な水や埃と目が触れたりすることで雑菌が侵入します。いったん起きると急速に進行するため、直ちに対処する必要があります。治療法は前述の硝子体手術を緊急に行います。この重大な合併症を予防するため、洗顔洗髪の制限を守り、目をいじらないように心がけ、目薬は必ず用法通りに入れ、保護眼鏡をつけてください。また、急激に見え方が悪くなる(目薬をつけても変わらない、時間を追うごとに悪くなる)場合、直ちにこうむら眼科に連絡してください。
  4. 水疱性角膜症(すいほうせいかくまくしょう)
    本来透明であるはずの角膜が白く濁ってしまうため、術後もかすんだ状態が続きます。治療は角膜移植しかなく、本島か本土で治療を受けて頂くことになります。手術法が確立されてからは稀な合併症となりましたが、もともと角膜が弱い方には起きる可能性があります。
  5. 網膜剥離
    網膜剥離は誰にでも起きうる病気ですが、白内障の手術を受けた方はそのリスクが少しだけ高くなると言われています。発生頻度そのものが高くないので稀な合併症ということになりますが、発症したまま放置すれば失明する可能性があります。治療はやはり硝子体手術となります。発生時期は術後数か月のこともあれば数年のこともあり、手術との因果関係がはっきりしないことも多いです。一方で網膜剥離は前兆をとらえることで予防できることがあり、術後の定期検査を推奨する理由の一つでもあります。
  6. 駆出性出血(五千件に一例)
    きわめてまれですが重大な合併症です。手術の傷口が今よりずっと広かった時代(二十年前)に見られた合併症であるため、現在の頻度はさらに低い可能性があります。本合併症が起きた場合、直ちに傷口を閉じて手術を中止する必要があります(そうしないと出血が止まらないのです)。頻度はきわめて低いものの、失明する可能性もある合併症です。

以上が稀であるものの比較的重い合併症です。以降は比較的起きやすいものの軽い合併症について説明致します。

  1. 高眼圧症
    術後に眼圧が高くなることがあります。非常に眼圧が高い場合は、外来で処置や点滴をします。軽度であれば目薬だけで様子をみます。
  2. 遠視、近視、老眼
    眼の中に留置する人工レンズの度を調整することで遠視、近視が緩和されますが、人によってはずれが生じることもあります。また、人工レンズにはピント調整機能がありません。このため、術後も眼鏡が必要となります。
  3. 後発白内障
    人工レンズを置いてくる袋が濁ってくることがあり、比較的多い術後合併症です。レーザーで濁りを飛ばすだけで改善するため、心配には及びません。外来で五分程度の処置です。
  4. 眩しさ
    術後に眩しく見えることがあります。手術時に虹彩の切除が必要となることがあり、その場合はサングラスが必要となることもあります。
  5. 黄斑浮腫
    術後、目の奥の神経である網膜に水がたまることがあります。点眼や注射で治癒しますが、放置すれば視力低下の原因となります。

白内障手術は長期予後も良好です。しかしまれではあるものの4、5、9、11のように治療が必要な状態となることもあるため、特に高齢の方には三か月に一回程度の術後検診をお勧めしています。最低でも年に一回は受診しましょう。